常に二者択一を迫られる、ストレスだらけの日常。せめて大好きな「散歩」くらいは、途中で立ち止まり、振り返り、あえて小さな路地に迷いこみながら闊歩したい。 ゆっくりと自分の目線で眺めながら歩いてこそ、見えてくる何かがあるはず?!

2010年4月27日火曜日

◆ほうじ茶の香りは、マタタビの魅力


 散歩の楽しみの一つに、街のいろいろな香りをかぎ分けながら歩くという、人には自慢できない趣味があります。それを私に教えてくれたのが、神楽坂のお茶屋さん「楽山」です。天気の良い日には、店の前に古めかしい煙突付きの煎り釜を持ち出し、そこでほうじ茶を煎ってくれます。

 その青白い煙のなんとも言えない、お茶の香ばしさがあたり一面に広がります。風向きによっては家を出た瞬間に、ほうじ茶の淡い香りを感じるときもあり、そんな日は一目散に「楽山」の店の前を目指します。もし、ほうじ茶の煙の近くでクンクン鼻を鳴らしながら、まさに「猫にマタタビ」状態で恍惚の薄目をしているオヤジがいれば、それが私です(笑)。

 それにしても、ハーブなどのアロマはいろいろな種類があるのに、お茶の香りというのはあまり聞きません。お香でも芳香剤でもいいのですが、「煎茶の香り」といった製品があれば、すぐにでも買い求めるのですが・・・。もし、そんな製品があればどなたか教えてください。

 最近では神楽坂がテレビや雑誌などで取り上げられることが多く、平日でも多くの人が訪れてくれるようになりました。同時に「楽山」のほうじ茶も売れているのでしょう。ほうじ茶を煎る回数がかなり多くなってきたように思えます。私と同じ匂いフェチの方、神楽坂の昼間の散歩は、晴れた天気の良い日がオススメです。

2010年4月25日日曜日

◆両国まで散歩―「江戸東京博物館」


 今日は絶好の散歩日和でした。お昼前に神楽坂を出て、一路、本郷・御徒町方面へ。できるだけ大きな通りを避けて、路地をくねりながら歩くのが私の散歩のルールです。目的地は隅田川を渡って、両国にある「江戸東京博物館」。蔵前橋通りに出て橋を渡り、横綱町公園でおにぎりを食べて腹ごしらえしました。

 この横綱町公園には、関東大震災で亡くなった人たちを供養する慰霊堂があります。大正12年(1923年)9月1日の震災時、陸軍の被服廠の跡地だったこの場所に、付近の多くの人たちが避難してきました。しかし、火災旋風などで運び込まれた家財道具に火の手が移り、この場所だけで4万人近くの犠牲者が出ました。
 いまはのどかな公園ですが、コンクリート造りの慰霊堂を近くで見ると、どこか威圧感があり、慰霊にかたむけた人々の想いが伝わってきます。また、デマによる暴動で殺害された朝鮮人犠牲者の追悼碑も公園内にあります。

 今回訪れた江戸東京博物館には、江戸時代はもちろん、明治・大正・昭和の展示コーナーもあります。すぐ近くにある横綱町公園と合わせて見学すると、関東大震災を経て戦争に突入した不幸な近代の歴史をより身近に感じられるかもしれません。

 ところで、江戸東京博物館は以前、両親を連れて訪れたことがありました。そのときは、かなり広くて展示品も充実しているという印象でした。それで今回、もう一度じっくり見てみようと思ったのです。ところが改めて訪問すると、自分が思っていたよりもボリュームが少ないような印象・・「こんなものだっけ」と感じてしまいました。おそらく前回は時間も限られていたので駆け足で回り、他にもたくさん見たい展示品があると、勝手に思ったのかもしれません。

 散歩でもよくあることですが、初めて通ったルートは「長い」「遠い」と感じます。でも、道を覚えて何度か通ると、それほど距離を感じなくなるものです。これと同じことが、博物館にも言えるのでしょうか?

 でも、江戸東京博物館は、入場料金600円(一般・常設展示)で、けっこう充実していると思います。伊豆あたりの観光地にあるような、(正直言ってわけのわからない)博物館群とは比較になりません。特に、私が気に入っているのはジオラマ展示。江戸や明治の街並みを再現したジオラマに入り込んで、当時の暮らしを想像するのが好きです。


 お台場にある「船の科学館」もオススメの1つ。大きな船の模型や機関などの構造物展示が充実しているうえ、東京湾を行きかう船を実際のレーダーで眺められる操舵室展示もあります。連休あたりに子どもを連れて訪れてみてはいかがでしょうか。
 
【今日の散歩】
神楽坂→本郷→御徒町→蔵前橋→両国→秋葉原→神保町→飯田橋(約12km)

 

 

◆大人の下町遊園地「立石」

 先日、取材で葛飾区の京成立石に行きました。ここは「大人の下町遊園地」とも紹介される、まさに昔ながらの情緒が残る下町です。京成の立石駅を降りた瞬間に、もつ焼き屋、焼き鳥屋、揚げ物屋の匂いが鼻をくすぐり、酒好きならずとも楽しい気分にさせてくれます。

 聞くところでは、昼間からオープンしているチョイ呑みの居酒屋も多く、開店前から行列ができる人気店もあるそうです。駅前の踏み切りに続くメインのアーケード街から、1本外れた場所に小さなアーケード通り「立石仲見世商店街」があり、先の焼き物、揚げ物の匂いの出所となるお店が、軒を連ねています。かつての闇市の名残を引くたたずまいは、まさに下町を代表するような風景。子ども2人を乗せた3人乗りのおばさん自転車が、狭い路地を行きかったりしています。

 また、踏切を隔てた反対側には、「鳥房」という人気の居酒屋があり、その奥には、これまた昭和の香りが色濃く残る「呑んべ横丁」もあります。駅前近辺にはモツ焼き屋が異様なほど多く、まだ明るいうちから、オヤジたち(女性も多い)が煙の中で陽気に呑んでいる様子は、見ていて笑ってしまうほどです。

 そんな立石の街を歩いていて、ふと、こういう風景こそ、いまの子どもたちに見せて(体験させて)あげることが大切なのでは…と考えました。花見の席や草野球もそうですが、親たちが本当に楽しんでいる姿の記憶は、けっこう後々まで覚えているものだと、自分自身を振り返ってみてそう感じたからです。

 ガイドブックや観光案内などでは、「下町情緒」というキャッチコピーがいたるところに使われます。これは昔ながらの「懐かしさ」「人情」といった、雰囲気やイメージをひと言で伝えるにはとても便利な言葉です。最近はやたらとこの言葉が使われすぎて、あたかもマーケティングや広告活動のブランド用語として、一人歩きしている気さえします。しかし、この耳ざわりの良い言葉のうわべだけをなぞるのではなく、その深いところ――日常の泥臭い暮らしの中――にこそ、本当に大切なものがあるのではないでしょうか。

「下町情緒だって?知らないね。これが私の日常だけどなにか?」と言いたげ(笑)
【今日の散歩】
立石駅近辺(約3km)
 

2010年4月21日水曜日

◆夜の神楽坂散歩の密かな楽しみ

 空が暗くなり、お店の電飾が目立ちはじめる夕方6時くらいから、神楽坂の路地裏を散歩するのが好きです。予約のお客さんがぼちぼち来店してくる時間。料亭や飲食店がこれから忙しくなる間際に、時間がポッカリと空いてしまったような、妙に落ち着いた空気を肌で感じながら、狭い路地を選んで散歩します。
 厨房から外に出て一服している料理人や、仕込みの余りものを通いネコに分け与えるお店のスタッフ、玄関に盛り塩を置くママさんなど・・・神楽坂がその本領を発揮しようという前に、ちょっとだけ垣間見ることができるこの街のもう1つの顔です。お座敷に急ぐ芸者さんと、路地角でばったりニアミスになることもあり、けっこう楽しいものです。

 実はもう1つ、あまり人には自慢できない自分だけの楽しみ方があります。それが街の匂いです。冬場の寒い時期はいまひとつですが、今日のように暖かくなってくると、お店や民家の入り口や窓が開けられ、仕込んでいる料理のさまざまな香りや、民家の夕飯の匂いがそこら中に漂ってきます。
 焼き魚や煮物、ごま油の香りから、玉ねぎを炒めた甘くて香ばしい香り、肉を焼く魅力的な煙、カレーやガーリックのパンチの効いた一撃まで、歩くたびにさまざまな料理の香りに包まれます。さらに、バーのどことなく湿った部屋の匂いや、座敷の畳、女性の香水まで、鼻に届く匂いの出所をキョロキョロと探りながら歩くのが好きです。

 この夕暮れ散歩に出かけるときには、必ずiPhoneからイヤフォンで音楽を聴き、度がかなり弱くなった室内用(仕事用)のメガネをかけて外出します。耳を音楽でふさがれ、視力もあえて弱くすると、不思議と鼻が敏感になってきます(経験上、たぶん間違いないと思う)。そのうえで街の匂いをたどって徘徊する、密かな楽しみに浸るのです。
 おそらく、私は立派な匂いフェチ! ひとつ間違えば、変質者の領域に入る人間かもしれません。
【今日の散歩】
神楽坂近辺(約1.5km)

2010年4月20日火曜日

◆神楽坂の憩い空間①「象さん公園」


 住処にしている神楽坂近辺で、ちょっと変わった不思議なスポットを紹介していきます。神楽坂散策の参考にしてもらえれば幸いです。
 第一弾は、地下鉄神楽坂駅から近い「象さん公園」です。神楽坂から江戸川橋へと坂を降りる途中にあり、両地域の近道としても利用される小さな長細い公園です。ユニークなことに、朝8時くらいから夕方(5時もしくは6時)までしか利用できず、夜は門が閉じられて立ち入ることができません。
 神楽坂側(坂の上)から入ると、一見、普通の公園のように見えますが、坂の傾斜を生かし、階段横には滑り台が設けられています。これが、写真にあるように、2匹の像をかたどったシュールなデザイン。子供心にはちょっとコワイと感じそうな外観です。
 どういう意図で像をモチーフにしたのか不明ですが、不思議なことにここで遊ぶ子どもの姿はあまり見られません。でも、昨今の神楽坂人気の影響をほとんど受けず、ひっそりとたたずむ公園で、天気の良い日などは、本当にゆっくりくつろげます。
 ちなみに、すぐ近くにはチャーハンやこってりめのラーメンが人気の中華料理「りゅうほう」や、昔ながらの洋食「イコブ」、クリームパンの「亀井堂」などの穴場グルメもあります。
 また、「象さん公園」の江戸川橋側には、昭和レトロにとっぷりはまり込める小さな洋食屋「キッチンえびす亭」があります。老夫婦が営むこの店は、ある程度の料理が注文されると、すぐに閉店になってしまい、食べそびれることもしばしば。でも、地元の人には昔から愛されている名店です。もし訪れるなら、そのあたりの事情も加味しながら、気遣いしてください(ブログとはいえ、あえて写真は掲載しません)。
【今日の散歩】
神楽坂・江戸川橋近辺(約3km)

2010年4月16日金曜日

◆「保証書は箱の中に」??


 冷たい雨が降るなか、家電関連の原稿のリサーチのため、有楽町のビッグカメラに行きました。目的は3D関連の製品。テレビやレコーダー、デジカメなどすでに発売されている3D対応モデルやそのデモを自分の目で確認しました。今年は「3D元年」といわれ、3Dが大きなトレンドに育ちつつあります。いずれ、モデル選びのポイントなどもこのブログで紹介していきたいと思います。
 今回はこのテーマではなく、メガネスタンド購入のちょっと笑ってしまったエピソードを紹介します。私は両眼0.1以下のかなりの近視で、部屋用と外出用の2つのメガネを使い分けています。以前からメガネスタンドが欲しいと思っていたので、リサーチ後にメガネ売り場をのぞきました。ちょうど手頃な製品があったのでレジに持っていくと、若い女性の店員さんが「保証書は箱の中に入っておりますので・・・」と、とても丁寧な口調でいいました。
 そのトークを最初は聞き流した私も、「メガネスタンドに保証書?」と心の中で自問し、サイフを開く手を止めて、その製品の箱を凝視してしまいました。すると、女性店員さんも私の異様な間を察知したらしく、レジ操作を止めて一緒に箱をしばらく凝視・・・。
 2秒ぐらいたって、
女性店員さん:「(お客様)これは・・・(何?)」
私:「普通のメガネスタンド・・・。(だから保証書って)」
女性店員さん:「保証書はありませんよね。そうですよね」
と、照れ笑いです。
「すみません。いつもの口癖で言っちゃいました」と、顔を赤くする女性店員さんを見て、私もなんだかほんのりとした心になることができました。

2010年4月15日木曜日

◆京都嵐山のサクラと雪

 本日は寒の戻りで、神楽坂も季節はずれの冷たい雨に。本当に今年の春は気候がヘンです。少し前の話ですが、3月の終わりに京都に行きました。例年なら、サクラがほぼ咲きそろい、観光客でにぎわう行楽シーズンです。
 ところが京都に到着した日(3月29日)は、今日のように真冬並みの寒さで、夕方から雪が降るという始末。「これは積もってしまうのでは・・・」と心配するほど、本格的な降雪でした。ちょうど嵐山界隈を散策していたのですが、6、7分咲きのサクラの花に、みぞれや雪が降りかかるという、ある意味で貴重な風景を見ることができました。
 渡月橋の近くでサクラを撮影していたら、突然黒い雲が空をおおい、みぞれや雪が降り始める――わずか数分の間に目の前の景色ががらりと変わってしまいます。




 世界文化遺産に登録されている天龍寺の庭園では、季節はずれの雪風景を撮影しました。


 今年のこうした異常気象で、花見の時期が長くなり、例年と比べて経済効果が大きかったそうです。しかし一方で、野菜が高騰するなどのマイナス面も。景色を眺めるだけなら大きな問題はありませんが、社会や経済はほんのわずかな気候の変化で大きな影響を受けるのは事実です。
 したたかなサクラの花を眺めて思うのは、いま声高に叫ばれている「温暖化」という言葉が、しょせん人間の傲慢さと強欲さを表すだけの、空虚なスローガンで終わらないことを願います。
【京都の散歩】
嵐山界隈(約5km)

2010年4月12日月曜日

◆ヒトは一生でどのくらいの距離を歩けるか?


 先週末、暖かい陽気に誘われて、江ノ島散策に出かけました。JR藤沢駅から歩いて江ノ島に向かいながら、ヒトは一生の間にトータルでどのくらいの距離を歩くことができるのか? という疑問が浮かんできました。
 産業革命以前のクルマも列車もない時代、馬などの乗り物があったにせよ、ヒトは現代人よりも長い距離を歩いたことでしょう。例えば、1日平均8kmを自分の足で移動したとして、1年間に2920km。これを14年続けると40,880km、つまり地球を一周できます。もちろん「誰が一生で何km歩いた」という記録はありません。一説には20万km(地球から月までの約半分)くらい移動できるという試算もありますが、その前に足腰にガタがきてしまうような気もします。
 これは以前、上野動物園の園長を務めておられた増田光子さんにうかがった話ですが、そもそも大半の野生動物の寿命は歯に依存するそうです。歯の何割かが虫歯やケガで欠損すると、摂食に支障をきたし、身体が弱って寿命を迎えます。
 幸いにもヒトには入れ歯などがあり、医療の進歩で寿命は昔と比べてかなり延びています。そのぶん長く歩き続けられるわけですが、ヒトの足腰はどのくらい歩くとパーツとしての寿命を迎えるのでしょうか? やはり軟骨が磨り減ったり、骨が変形したりして、満足に歩けなる時が来るのでしょう。そうなる前にせいぜい散歩を楽しみ、月を近くで眺める距離まで行きたいものです(近眼なもので・・・笑)。
 そんな馬鹿なことを考えながら、江ノ島駅付近で険しい斜面で必死に建つ山寺のような家(たぶん普通の家だと思う)を見かけました。趣があって希少価値のお住まいだと思います。


 江ノ島では、岩屋も含めて島の裏側まで散策しましたが、やはり人は多かった。意味のない有料のエスカレーターは利用せず、江島神社の右側の小道を行くのがオススメです。
【今日の散歩】
JR藤沢駅→江ノ島→江ノ島駅(約5km)

2010年4月8日木曜日

◆哲学堂のサクラ


 江戸川橋の浪花家(麻布十番の浪花家の暖簾分け)で購入した、たい焼きをほおばりながら目白方面に散歩。学習院の入学式らしく、目白駅前は学生で混雑していました。
 さらに目白通りを西進して、結局は西武線・新井薬師の哲学堂公園まで散歩。以前、近くの野方に住んでいたことがありましたが、訪問は初めてです。
 ここ意外と面白いですね。孔子と釈迦、ソクラテスとカントの4大哲学者を祀った「四聖堂」や、東洋の哲学人を祀る「六賢台」などの古い建物がこじんまりとした丘の上に並びます。ただ、哲学にちなんだこれらの建物はわかるにしても、天狗と幽霊の像が並ぶ「哲理門(妖怪門)」に、「髑髏庵(どくろあん)」など、学問とはかけ離れたいわくありげな建物も。さらに、この場所には梅の木にまつわる幽霊話もあるとか・・・。
 この哲学堂を作った明治の哲学者・井上円了は、迷信を否定する立場から、妖怪や幽霊を学問として研究した第一人者でもあったそうです。東洋と西洋の思想に古来の迷信も渾然一体になったような、不思議な空間でした。
 特に、私が気に入ったのは、哲学堂の裏手に当たる場所にひっそりとかかる「理外橋」。宇宙の真理を突き詰めても「理外の理」があることを知るべし、ということでしょうか?
 もちろん、この時期ですから、サクラも満開。とてもきれいでした。そういえば先月末、京都に立ち寄ったときに、「哲学の道」を歩きました。サクラはまだ六分咲きといった感じでしたが、四条川原町から南禅寺、哲学の道、銀閣寺を回って、なぜか下鴨神社(出会いのパワースポットらしい)まで散歩しました。
【今日の散歩】
神楽坂→目白→哲学堂→野方→都立家政→高円寺(約12.5km)